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天然記念物「奈良のシカ」を蹴飛ばす動画拡散、県に苦情殺到…文化財保護法違反に問われる可能性も
2024年07月23日 16時40分
#動物虐待 #奈良のシカ #天然記念物 #文化財保護法

国の天然記念物である「奈良のシカ」を男性が叩いたり、蹴飛ばしながら歩くところを映した動画がネットで拡散し、注目を集めている。

問題の動画は、7月21日にYouTubeで公開されたもので、奈良公園(奈良市)の歩道で撮影されたとみられる。動画では、男性が少なくとも鹿の顔を1回叩き、胴体あたりを2回蹴っている様子が映っていた。

奈良県公園室は弁護士ドットコムニュースの取材に対して、この動画を受けて「非常に不適切な行為」と答えている。「奈良のシカ」を傷つけたり、死なせたりした場合は、文化財保護法違反などに問われる可能性がある。

国の天然記念物である「奈良のシカ」を男性が叩いたり、蹴飛ばしながら歩くところを映した動画がネットで拡散し、注目を集めている。

問題の動画は、7月21日にYouTubeで公開されたもので、奈良公園(奈良市)の歩道で撮影されたとみられる。動画では、男性が少なくとも鹿の顔を1回叩き、胴体あたりを2回蹴っている様子が映っていた。

奈良県公園室は弁護士ドットコムニュースの取材に対して、この動画を受けて「非常に不適切な行為」と答えている。「奈良のシカ」を傷つけたり、死なせたりした場合は、文化財保護法違反などに問われる可能性がある。

●奈良県「奈良県警と情報共有している」

問題の動画では、当初、多くの外国人観光客が鹿の写真を撮ったり、鹿せんべいを与えたりする様子が映されていた。

しかし突然、人混みをかきわけてきた若い男性が、鹿を叩いたり、蹴ったりしながら早足で歩いていく場面となった。その異様な行動に、周囲の外国人観光客も驚いた様子が映っている。

この動画が拡散すると、SNSでは「鹿がかわいそう」「とても悪質」「すぐに逮捕すべき」といったコメントが多く寄せられた。奈良県庁にも「こんな行為は許せない」などといった動画を見た人たちからの苦情や問い合わせの電話が殺到しているという。

奈良公園を管理する奈良県奈良公園室の担当者は、この動画について、「即座に違法行為とは断定できないが、とても不適切な行為であり、奈良県警と情報を共有しています」と話す。

画像タイトル 鹿を蹴って歩く男性の動画(YouTubeより)

●過去には鹿をボウガンで撃って死なせた男性に実刑判決

奈良公園や春日大社、その周辺に生息する鹿は、768年に武甕槌神(タケミカヅチノカミ)が鹿島神宮(茨城県)から白鹿の背に乗っ奈良の地に移ったという伝承から、「神鹿」とされて、古来より手厚く保護されてきた歴史がある。1957年には「奈良のシカ」として国の天然記念物に指定された。

奈良公園室の担当者によると、天然記念物の「奈良のシカ」を傷つけたり、殺したりした場合は、文化財保護法違反として、5年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金に処される可能性がある(196条)。また、奈良県立都市公園条例でも鳥獣類の捕獲や殺傷は禁じられているという(4条5項)。

過去にも「奈良のシカ」が傷つけられたり、殺されたりした事件はあった。2010年には、鹿肉を売る目的でボウガンで鹿を撃ち死なせたとして、文化財保護法違反の罪で飲食店経営の男性が懲役6カ月の実刑判決を受けている(奈良地裁)。

2021年にも、自動車に頭突きされたことに腹を立てた20代男性が、鹿を刃物で傷つけ、死なせたとして文化財保護法違反の罪に問われ、懲役10カ月(保護観察付き執行猶予3年)の有罪判決を受けた(奈良地裁)。

●観光客が増えて、鹿のトラブルも増加

国内外からの観光客流入にともない、鹿と接触する機会も増えて、トラブルも多くなってきているという。このため奈良県では、多様な言語で鹿と不適切な接触をしないよう、注意を呼びかける看板を設置したり、SNSなどでマナーを呼びかけたりするなど啓発に力を入れてきたという。

奈良県公園室の担当者は、今回の動画の拡散を受けて「県警や関係団体とも連携を強め、シカの保護強化を検討したいと思っています」と話している。

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