引っ越し先の新居に、大量のアリが・・・。気持ち悪くてノイローゼ気味という女性が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに投稿した。
相談者は、築25年ほどの賃貸住宅に引っ越したばかり。引っ越し当日からアリを見かけていたが、日に日にその数が多くなり、今や「電子レンジや冷蔵庫はアリが這っており、使い物になりません」という。
管理会社に連絡したものの、「引っ越し前に確認に行った時にはそんなことはなかった」、「うちの会社は虫は自分で駆除してもらっているから、自分で薬を買ってなんとかしろ」として、まったく対応はしてもらえない。
投稿者は、「アリがあまりに多く気持ち悪くて料理もできませんし、少しノイローゼ気味です」と疲れきっている様子だ。そこで、投稿者は「電子レンジ等の弁償、蟻の駆除の要求など、何かできることはないでしょうか?」と質問している。
ただ、引っ越し初日にアリが発生したことを投稿者以外の家族も目撃しているものの、証拠となる写真などはないそうだ。そのような状況でも、管理会社にアリの駆除などを要求できるのか? 弁護士に聞いた。
●管理会社の責任は?
「賃貸不動産の管理会社には、大まかに2つのパターンがあります。1つは、大家さんから賃借した部屋を入居者に転貸し、管理業務もおこなう場合。もう1つが、大家さんから管理業務のみを受託する場合です。後者の管理会社のほうが多いでしょう。
そこで、相談者のケースでも『管理業務のみを受託した管理会社』と想定して、答えていきたいと思います。
まず、賃貸借契約において、借りる側(賃借人)が住居を契約の目的に従って使用できるように、適切な状態にしておくべき積極的な義務を負っているのは、貸す側(賃貸人/大家)です。投稿者は管理会社にアリの駆除を要求したいということですが、賃貸人ではない管理会社には、それに応じる義務はありません」
では、今回の相談者は自力でアリと闘うしかないのだろうか。
「今回のケースで、発生しているアリの量は不明です。もし、相当に大量のアリが発生し、日常生活にも支障をきたすほどであれば、前述したように、本来であればその駆除をするべきは賃貸人ということになります。したがって、相談者は賃貸人に対し、アリを駆除するよう求めることができます。
また、相談者が費用を負担してアリの駆除を行った場合には、その費用を『必要費』(現状の建物価値を維持する費用)として、賃貸人に請求できると考えられます(民法608条1項)。
いずれの場合でも、証拠は必要です。家族の目撃証言も証拠となりますが、第三者の目撃証言ほど信用性が高くありません。できれば、今からでも大量のアリが発生している写真を撮影しておくといいでしょう」
相談者は、損害賠償の請求も考えている。それも可能なのだろうか。
「日常生活に支障をきたす程度の大量のアリが発生し、賃貸人にアリの駆除を申し入れたにもかかわらず、賃貸人が応じてくれず、家電製品が物理的に使用不可になったという状況であれば、賃貸人に対して、損害賠償の請求ができると思われます。
しかし、一般的には、アリによって家電製品が物理的に使えなくなることは考えにくいことから、損害賠償の請求は難しいと思われます」