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北海道地震の停電で「完全電子マネー派」絶望、キャッシュレス決済普及に向けた課題
2018年09月15日 09時45分

北海道地震に伴う大規模停電で、コンビニなど店舗のキャッシュレス決済が使えず、電子マネーに頼る消費者が絶望したという話題がネットを駆け巡った。

ネットの「はてな匿名ダイアリー」には9月6日、「完全電子マネー派の北海道民だけど積んだ」(原文ママ)との題名で、現金を持っておらずコンビニで何も買えないため諦めて帰ったという内容が投稿され、こうも書かれた。「腹減った。現金持っとくんだった。これ積んだわ」(同)。

実際に同様の苦しみを味わった人がどれだけいたかは定かではないが、この投稿は大きな反響を呼んだ。キャッシュレス決済の脆弱性について、改めて浮き彫りになった形だ。一方、政府はキャッシュレス社会を推進したい考え。2018年4月にはそれまでの目標を2年前倒しし、2025年までに40%まで引き上げることを打ち出している。

災害大国の日本で、キャッシュレス社会は政府の思惑通りに進展するのだろうか。キャッシュレス決済問題に詳しいニッセイ基礎研究所の福本勇樹主任研究員に、克服すべき課題などについて考えを聞いた。

北海道地震に伴う大規模停電で、コンビニなど店舗のキャッシュレス決済が使えず、電子マネーに頼る消費者が絶望したという話題がネットを駆け巡った。

ネットの「はてな匿名ダイアリー」には9月6日、「完全電子マネー派の北海道民だけど積んだ」(原文ママ)との題名で、現金を持っておらずコンビニで何も買えないため諦めて帰ったという内容が投稿され、こうも書かれた。「腹減った。現金持っとくんだった。これ積んだわ」(同)。

実際に同様の苦しみを味わった人がどれだけいたかは定かではないが、この投稿は大きな反響を呼んだ。キャッシュレス決済の脆弱性について、改めて浮き彫りになった形だ。一方、政府はキャッシュレス社会を推進したい考え。2018年4月にはそれまでの目標を2年前倒しし、2025年までに40%まで引き上げることを打ち出している。

災害大国の日本で、キャッシュレス社会は政府の思惑通りに進展するのだろうか。キャッシュレス決済問題に詳しいニッセイ基礎研究所の福本勇樹主任研究員に、克服すべき課題などについて考えを聞いた。

●18%を40%に高める目標、2025年までに

ーーそもそも日本ではどれくらいキャッシュレスが普及しているのでしょうか

「まずキャッシュレスとしては、クレジットカードやデビットカードに加え、SuicaやWAONなどの電子マネー、QRコードなどのモバイルウォレットがあります。

いま日本ではキャッシュレス決済比率が18%(2015年)ですが、政府は2025年に向けて40%に高めようとしています。この4月に経産省は新たな目標を出して、それまでの目標を2年前倒ししました。40%という数字は世界的な状況を踏まえて決められた目標です」

ーーどのようにして普及させようとしているのでしょうか

「経産省は、キャッシュレス決済を導入するお店側に税優遇をつけようとしたい考えです。経産省の意識としてはお店側が入れてないから、消費者は不便に感じているという問題意識のようで、まずはどこでも使える環境にしていこうとしています。

もともと、政府としては外国人観光客が不便に感じて消費を控えないよう、キャッシュレスを進めたいという狙いでした。それが最近は日本に住む消費者の利便性という観点に加え、キャッシュレスを進めると店舗側の人手不足解消に役立ったり、その決済関連データをビッグデータとして活用したりできるという意識に変わってきました」

●小規模店舗、資金繰りの不安もネックに

ーーたとえば地方の個人商店がキャッシュレス決済を導入するのはコスト面からも難しいのではないでしょうか

「はい。まさにキャッシュレス決済を日常的にかなりの割合でやっているのは、東京などの大都市に住む人たちだと言っていいでしょう。

導入する端末費用が高くて、小さい店舗だと負担感は大きいです。またクレジットカード決済をすると、その料金が店舗側に入るのはおおむね半月から1カ月後です。入金時期をより早めるなど資金繰りの不安を払拭するようなこともする必要があるでしょう」

ーー諸外国の普及率を見ると韓国が89.1%と突出していますが、これはどうしてでしょうか

「韓国の場合はやや特殊なのですが、アジア通貨危機で経済が壊滅していますよね。その機に、脱税防止などを狙って様々な政府主導の取り組みがなされました。クレジットカード利用に所得控除(年間利用額の20%を所得控除、上限30万円)を導入したり、店舗でのクレジットカード取り扱いを義務付けたりしました(年商240万円以上の店舗対象)」

●電子マネー利用者が路頭に迷うことがないように

ーーキャッシュレス決済の脆弱性についてどう考えていますか

「北海道地震では、一部のコンビニが非常電源で営業を続けたところがあると聞きましたが、もともとキャッシュレス決済は停電に弱いという脆弱性があります。携帯電話を使って決済しようにもバッテリーが切れたら使えないという問題があります」

ーー今回の北海道地震でのことは教訓になるでしょうか

「はい。政府はキャッシュレス社会を進めたいなら、今回のことをしっかり教訓にしていくべきだと思います。事業者側が災害のレベルに応じて、きめ細やかな業務継続プランを整えるなど、電子マネーを使う人が路頭に迷うことがないようにしないといけません。

もし政府目標の40%を達成したとしたら、お金を持たずに歩く人が今よりもかなり増えるわけです。災害時は通信が混んで、電気も使いにくくなります。『キャッシュレス決済を使えなくなった時にどうするのか』という議論をこれまでよりも真剣にやらないと大変なことになるでしょう。非常時なので仕方ないということでは済みません」

(取材:弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治)早稲田大卒。国家公務員1種試験合格(法律職)。2007年、農林水産省入省。2010年に朝日新聞社に移り、記者として経済部や富山総局、高松総局で勤務。2017年12月、弁護士ドットコム株式会社に入社。twitter : @Yuji_Shimoyama

(弁護士ドットコムニュース)

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